夜中にLINEを見返してしまう話
スクロールしてるうちに、返事が来なかった理由を、自分の文面の中から探してた。
金曜の深夜1時、布団に入って電気を消した後にまた明るくしてしまった。スマホの充電ケーブルを抜いて画面を天井に向けながら、指だけが勝手にLINEを開いている。
3年前に止まったトーク。相手は近所のコンビニで働いていた子で、付き合っていたのは1年半だった。既読だけついて、そこから返事が来ないまま関係は終わった。向こうから「ちょっと時間ほしい」とだけ送ってきて、それが最後のメッセージだった。
ブロックもされてないし、アカウントも消されていない。ただ、こっちが何を送ってももう届かない。向こうの生活に僕のLINEが届く余白はもうない、ということだけが静かに事実として残っている。
スクロールすると、付き合っていた頃の会話が遡る分だけ明るくなっていく。「今日ラーメン食べたい」「さっき会った時の服、新しかったよね」。どうでもいい会話ほどなぜか覚えていて、当時自分がどんな声でそれを送ったのかも、なんとなく思い出せる。
止まった場所まで戻ってくる。最後の「うん、また連絡する」の3文字で、いつも止まっている。
新しい返事が来るわけじゃない。それなのに自分が送った文面ばかり、何度も読み返してしまう。
「もう少し短く送ればよかった」
「あの絵文字、要らなかったかも」
「あのとき、無理に会わなくてよかったんじゃないか」
返事が来なかった理由を、彼女の事情じゃなくて僕の文面の中から探している。向こうの気持ちが変わった理由を自分の選ぶ言葉のせいにすれば、まだ「直せた」可能性があったと思いたいのかもしれない。
僕の文面のせいじゃないことくらい、分かっている。彼女は僕という人間そのものに、だんだん興味が薄くなっていった。文面を直そうが絵文字を抜こうが、変わらなかったと思う。
それでも、自分のLINEの履歴をまた開いてしまう。
今さらやり直したいわけじゃない。連絡先を知っている別の女性は今もいくつかある。でも今夜スクロールしているのは、そのどれでもない。1年半ずっと一緒にいて、最後は向こうから静かに消えていった、あの子のトークだけだった。
返してもらえなかった夜のことを、僕はまだ許せていないらしい。許せていないのは彼女じゃなくて、あの文面を送ったときの自分だ。
枕元のスマホを裏返して、部屋を暗くし直す。冷蔵庫の音だけが少し遅れて耳に入ってくる。明日、早起きする理由は特にない。
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