零質問箱

深夜2時の食欲

腹が空いているわけじゃない。それでも何かを入れないと、眠れない夜がある。

深夜2時、冷蔵庫を開けている。

腹が空いているわけじゃない。今日はちゃんと夕飯も食べたし、ハイボールを2缶飲んだ。それなのに、何か口に入れないと眠れない気がする。体の問題じゃなくて、夜の終わらせ方が分からなくなっている、というのが正確だった。

結局、黒いスウェットに白いパーカーだけ羽織ってコンビニまで歩いた。徒歩3分の距離。セブンでチルドのカルボナーラと、角ハイの缶をもう1本追加で買ってきた。部屋に戻って電子レンジでパスタを温めて、テレビもつけずに椅子で食べた。

食べている間だけ、何も考えなくて済む。カルボナーラの味は普通だった。美味しいとも、まずいとも思わなかった。ただ咀嚼している、というだけで頭の中のざわつきが少し薄くなった気がした。

食べ終わったあと、洗面所の鏡を見て少しだけ後悔した。胃がずっしり重くて、さっきまで少し酔っていたのがもう抜けていた。明日、体重計に乗ったらいつもより重い数字が出る。

こういう夜が月に3回くらいある。納期前でもなく、特別に嫌なことがあったわけでもない日に、急に冷蔵庫の前に立っている。

「満腹中枢が壊れてるんじゃないか」と一度、友人に冗談で言われた。その時は笑ったけど、壊れてるのは満腹中枢じゃない。

静かすぎる部屋で、自分1人で夜を終えるのが、まだちょっとだけ苦手なだけだ。誰かが隣で寝息を立てていたら、僕は冷蔵庫を開けない。カルボナーラを買いにコンビニまで歩かない。

前に付き合っていた人と、1ヶ月だけ一緒に住んでいた時期があった。その頃、僕は深夜に食べることがほとんどなかった。彼女の寝息が聞こえている部屋で、無理に何かを食べる必要がなかった。

別れてから、また冷蔵庫を開けるようになった。寂しいから食べている、と言い切るのは違う気がする。寂しさは食欲の形で出てくるだけで、本体は別のところにある気がする。

明日からちゃんとする、と毎晩思っている。明日を迎える前に、僕はいつもまた冷蔵庫を開けている。

ハイボールの残りを飲み切って、ベッドに潜った。胃の重さのせいで少し寝つきが悪い。眠るまで、綾辻の読みかけのページを少し開いて閉じた。本の中で誰かが静かに死んでいく場面だった。

明日の朝、体重計に乗るか乗らないかは、明日の自分に任せることにした。

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